[シカゴ 15日 ロイター] - 中国が15日に行われた米国との「第1段階」通商合意の署名式で、米農産品を大量輸入するとの約束について「市場状況に基づく」購入になると発言したことから、農家や貿易業者の間では、米農産品への報復関税で具体的対応が取られるかどうかに懐疑的な見方が強まった。

合意で中国は2020年に追加的に少なくとも125億ドルの米農産品を購入し、21年は195億ドル以上を追加購入すると確約。いずれも17年の240億ドルの輸入実績に基づいている。

ホワイトハウスの署名式でトランプ米大統領の隣に立った中国の劉鶴副首相は、中国企業は米農産物を「市場状況に基づき」購入すると発言した。

これを受けて指標となるシカゴの大豆先物は1カ月ぶりの安値を付けた。米国産大豆は米中貿易戦争が勃発する以前は米農産品の対中輸出で金額別の最大品目だった。

シカゴの証券会社ゼイナー・グループの首席ストラテジスト、テッド・セイフリード氏は、市場状況の発言に加え、具体的な購入契約が交わされなかったことが失望を誘ったと指摘。

中国への売り込みを目指す米国の大豆生産者には、今後数週間に始まる収穫シーズンで過去最大級の収穫規模が確実視されているブラジル産大豆との競争が待ち受けている。

米アイオワ州のトウモロコシ・大豆農家、チャーリー・ザンカー氏は「合意で私たちの状況が大きく変わるとは思わない」と語る。貿易は「国際市場」で行われているからだとした。

合意では主要な米農産品に対する中国の関税が引き下げられることはなかった。ただ、トランプ大統領は米中が「第2段階」の合意に達し次第、すべての関税措置を解除すると表明した。中国でアフリカ産豚コレラの感染が拡大し、輸入豚肉の需要が高まっているにもかかわらず、米国産豚肉への関税率は68%にとどまる。

署名式に出席した全米豚肉生産者協議会のデービッド・ヘリング会長は「関税は撤廃されるべきだ」と強調した。

トランプ政権の高官は署名式後、中国は対米輸入拡大の約束を果たすために、関税の免除や調整などの措置を取る必要があるとの見方を示した。

中国の貿易業者も合意の実効性に懐疑的な見解を表明。

農作物を取引する中国の貿易業者は署名式前に「中国が合意から得るのもは何もないと私には思える」と指摘。「いくばくかの平安の見返りにお金を払っているだけだ」とした。

<課題残る>

合意文書によると、中国はバイオ技術を使った農産品の輸入審査を2年以内に短縮することを約束。中国による遺伝子組み換え作物(GMO)の承認は最大7年かかるため、米国はかねてから不満を訴えていた。

種子生産を手掛ける独バイエルや独BASFが加盟する業界団体BIOの幹部、マット・オマラ氏は「中国がどのように合意を実行するのかを見極める必要がある」と述べた。同氏によると、中国はバイオ技術を使った農産品に対する審査を他国による承認があるまで開始しないとみられるため、迅速な承認への課題は残る。

署名式に出席した全米大豆協会の会長、ビル・ゴードン氏は「私たちの取り組みは終わっていない」と指摘。「今後も多くの交渉が行われ、関税の緩和措置が取られるだろう」とした。

中国側は牛肉輸入でも譲歩し、月齢規制の撤廃に合意したほか、ホルモン剤使用の制限や血統情報の記録を義務付ける規制も緩和する。

全米肉牛生産者・牛肉協会の国際貿易・市場アクセス担当ディレクター、ケント・バッカス氏はこれらの規制変更によって対中輸出可能な米国産牛肉が広がると説明。「これは大きな変化だ」とし、「中国側が米制度の安全性を認めたということだ」と語った。

米大手穀物商社のアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)とカーギル[CARG.UL]、そして種子大手のコルテバは、第1段階合意を称賛する発表文をそれぞれ出した。